「あっ、坂田さん!お久しぶりです」
「よ…よお」








甘味処でバイトをしている私は、夕暮れ時にやってきた常連客の坂田さんを見つけると、いつもどおりに声をかける……までは良かった ものの、思ったよりも彼の反応が悪かったことに違和感を覚えた。いつもであれば、目が合った瞬間に向こうから声をかけてくる坂田さ ん。それはただの世間話であったり、セクハラ発言であったりと日によって異なるものの、彼と私はなかなか仲良しであった、と思う。








「(私…何かしたかな)」







振り返ってみても思い当たる節がない。挙動不審な坂田さんは非常に気になるが、お店にはほかのお客さんもいる。後ろ髪を引かれなが らもお客さんの対応をしている間にも、時々視界に入る坂田さんは頭を抱えたり、柱に打ち付けたり(これは少し痛そうだった、あとお 店壊れるからやめてください)とどうも様子がおかしい。







「あの、坂田さん?」








あまりにも酷いのでそっと声をかけると、予想以上に大きく肩を揺らして反応した坂田さん。どうしようこの人本当におかしい。







「お茶、お入れしましょうか」
「えっ、ああ、悪ィな」
「いいえー」







坂田さんは急須のお湯を湯呑に注ぐ手元をじっと見つめる。そんなに見られると変に緊張するんだけど……。結局坂田さんはお礼の言葉を短く述べた後、そのお茶を飲みながらため息を何度もついていた。神楽ちゃんや新八くんと喧嘩でもしたのかしら。幸いにも今日のバイトはいつもより早めのあがりだったので、次の店番の女の子と交代をしていまだ店内で奇行にはしる坂田さんの隣に腰を下ろした。







「どうかしました?」
「えっ、アンタバイトは……?」
「今日はもうあがりです」







坂田さんはそれを聞くと、んだよちくしょーと声を漏らした。え、なんで? 







「もう帰んのか?」
「と思ってたんですけどね、坂田さんがあまりにも様子がおかしいから」
「心配してくれたの、ちゃん優しいなァ、」







茶化さないでの意味を込めて、坂田さんをじっと見つめる。夕日に照らされた銀髪の髪はきらきらと輝いていて、とても美しいと思った 。ふと顔の近さに気付いたのか、彼は目を見開いて、頭をかいた。きらめく光が反射して、ほんの一瞬だけ目をそらせば、坂田さんの手 が、私の手に重なった。思わず手を引こうとすると、彼はそのままぎゅっと右手を握った。







「最近な、何しててもお前の顔がちらつくんだよ」







ぐっと力の入る右手。







「ただの客に言われたって迷惑かもしんねェし、こういうのキャラじゃねェんだけどよォ」
「は、い」
が好きだ」








ここはバイト先で、周りにはほかの常連さんもいるという状況も、坂田さんの言葉で頭の中から消え去ってしまった。思いもしなかった 内容にだんだんと頬が熱くなる。きっと今鏡で顔を見たら、真っ赤なんだろうな、とか、考える余裕もない。







「めっ…迷惑なんかじゃ、ない、です」








やっと絞り出した答えに、俯いていた顔をあげれば、目の前には坂田さんの満面の笑みが広がっていた。







「私も……好き、です」



















煌めく銀に魅せられて














ぎょええお久しぶりですスランプです
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