――絶対泣かない、そう決めていた。










校庭の桜のつぼみが開き始めた頃。

1人の少年が、目の前でたくさんの人々に囲まれている少女に向かって全力疾走していた。








「先輩!」









少女は、自分に向かって全力で走ってくる少年を見つけると、ふっと微笑んだ。











「赤也ああああっ!こっち来ないで!来るならジャッカルの方に突っ込んでえええっ!」

「俺かよ!おい赤也減速しろっ!」

「無理っス!」




















「…まったく、なんであんなに全力疾走してくるかな」

「だって先輩が…」

「私が何ー?」

「…なんでもないっス」

「なによー、気になるじゃん」

「何でもないっス!」

「ふーん、まあいいけど。あ、ねえ赤也!」

「何スか」

「テニス部レギュラー全員で写真でも撮ろうよ!」

「……」

「え、何?不満?」

「二人で撮りましょうよ」

「うん、いいよー」





















「先輩…卒業っスねー」

「うん、そうだねー」

「先輩は淋しくないっスか?」

「でも高校はそのまま進学するからねー、みんなそんなんだし。離れるわけじゃないよね」

「でも俺違うじゃないっスか」

「近いよ?」

「……」

「何赤也、淋しいの?」

「なっ…、そんなことなっ」

「はいはい、ちゃんと会いに来てあげるから!」

「ホントっすか?嘘だったりしたら俺赤目モードになるかも」

「ありゃそりゃだめだ!絶対会いに行く」

「約束っスよ!」

「当然!」











「ねえ先輩」

「なーに」

「俺、もうちょっと早く生まれたかった」

「何で?」

「だって俺だけ置いてかれるじゃないっスか」

「だから会いに行くってば」

「俺先輩と同じ歳になりたいっス」

「私だってそうだよ。でも赤也が後輩でよかったと思う」

「…」

「卒業したくないなー」

「先輩…、泣いてます?」

「…うん、赤也のせい」

「しょうがないな、俺の胸、貸してあげますよ」

「お願い」




















泣きたくなかったけど、君の前だけなら、弱いところさらけだしても良いと思った。

いつだって会いに行くから…そう心の中で呟いて、私は静かに赤也に寄り添った。






















卒業












卒業された皆さん、おめでとうございます!

卒業話がこんな似非赤也になってしまい、申し訳ないです!
やっぱり私には下書きが必要ですね!(本当にな!