「お登勢さァァァん!!!」
「何だィ、アンタら。たまった家賃でも払いに来たのかィ」
「たっ…助けてェェェ!!」
第四訓 第一印象が悪い奴にロクなやつはいない
「へェ〜、じゃああの娘も出稼ぎで地球に。金欠で故郷に帰れなくなったところをアンタらが預かったわけ…」
「つーか銀と新八が勝手に」
「仕方ねェだろ!身の危険を感じたんだよ!」
「バカだねェアンタも。家賃もろくに払えない身分のくせに」
「オレだって好きで置いてる訳じゃねぇよあんな胃拡張娘」
ガシャン、とグラスで攻撃する神楽。
「なんか言ったアルか?」
「「「いってません」」」
銀、白目剥いてる。
「いだだだ」
「そりゃいたいわな」
「アノ、大丈夫デスカ?コレデ頭冷ヤストイイデスヨ」
「あら?初めて見る顔だな。新入り?」
「ハイ。今週カラ働カセテイタダイテマス」
「キャサリンっていうんだって。出稼ぎで地球に来たんだって。実家への仕送りのために頑張ってるらしいよ」
「たいしたもんだ。どっかの誰かなんて己の食欲を満たすためだけに…」
ガシャン、と二度目のグラス攻撃。
「なんか言ったアルか?」
「「「「言ってません」」」」
…つーか学習しろよ。
「すんませーん」
突然戸があけられた。
「あの、こーゆーもんなんだけど、ちょっと捜査に協力してもらえない?」
おまわりさん?
「なんかあったんですか」
「うん、ちょっとね、このへんでさァ、店の売上持ち逃げされる事件が多発しててね。なんでも犯人は不法入国してきた天人らしいんだが、このへんはそーゆー労働者多いだろ、なんか知らない?」
「知ってますよ、犯人はコイツです」
神楽を指差す銀の指は、神楽によって反対方向に向けられた。
「おまっ…お前何さらしてくれとんじゃァァ!!」
「下らない冗談嫌いネ」
「アレ、コレ逆の向きにまげたら治るんじゃない?」
「さんやめましょう」
「てめェ故郷に帰りたいって言ってたろーが!!この際強制送還でもいいだろ!!」
「そんな不名誉帰国はごめんこうむるネ。いざとなれば船にしがみついて帰る。こっち来る時も成功した。なんとかなるネ」
「不名誉どころかお前ただの犯罪者じゃねーか」
「神楽あんたそんなことしてたの!?」
と、突然バイクのエンジン音がきこえた。
外には、銀の原チャリに乗ったキャサリン。
「アバヨ、腐れババア」
「キャ…キャサリン!!」
「え、犯人キャサリン!?」
「お登勢さん、店の金レジごとなくなってますよ!!!」
「あれ、俺の原チャリもねーじゃねーか」
「あ…そういえば私の傘もないヨ」
「おい、お前かんざしどうした」
「ん…?あ!なくなってる!そこにおいといたのに!」
遠くから、「バーカ」と叫ぶキャサリン。
「あの女ァァァァァ!!」
「血祭りじゃァァァァ!!」
「つぶしてやらァァァ!」
「ちょっ、何やってんの!?どこいくの!?」
運転席に神楽、助手席に銀、後部席に私と新八が乗り込む。
おまわりさんの制止なんて気にせずつっぱしるパトカー。
「ねェ!とりあえずおちつこうよみんな!僕らの出る幕じゃないですってコレ。たかが原チャリや傘やかんざしでムキにならんでもいいでしょ!」
「たかがってなんじゃァァァ!」
「新八、俺ぁ原チャリなんてホントはどーでもいいんだ」
「!」
「そんなことよりなァ、シートにレンタルビデオ入れっぱなしなんだ。このままじゃ延滞料金がとんでもないことになるどうしよう」
「アンタの行く末がどうしようだよ!!!」
「レンタルビデオ!?原チャリのほうも大事にしてよね!何回壊しゃ気がすむんだよ!」
「延滞料金なんて心配ないネ。もうすぐレジの金がまるまる手に入るんだから。原チャリだって買い換えられるアル」
「お前はその綺麗な瞳のどこに汚い心隠してんだ!!」
「そっかー、それならいいか」
「納得してんじゃねェェェェ!!」
そこでさすがに気付いたキャサリンは細い路地に入る。
「ほぁちゃぁぁぁぁぁ!!!」
気にせず神楽、建物を破壊しながらどんどん進む。
「なんかもうキャサリンより悪いことしてんじゃないの僕ら!!」
まったくだ。
「死ねェェェェアル!キャサルィィィン!!」
路地から出ると下は川。
「あれ?」
落下。
「あれェェェェ!!」
「ちょっ、どーすんのコレ!!」
「ドアが開かないアル!」
「窓割って、窓!」
「ぎゃあああ!水がァァァ!!」
「レジアル!」
「あった、かんざし!!」
「ってちょっと、神楽ちゃん!?」
どうにか無事に脱出した私たち。
家賃は今月分浮いたらしいし、かんざしも戻ってきたし…。
「おーし、帰るよー!」
「神楽ちゃんがレジを持って逃走しようとしてるんですがさん!」
「神楽ァァァ!私はそんな子に育てた覚えはないよ!」
「育ててねェェェ!!」