お妙に縁談があったらしい。
なんだか急に新八が家から電話をかけてきて、私たち(私、銀、神楽)は呼び出された店に向かった。
第八訓 粘り強さとしつこさは紙一重
「よかったじゃねーか。嫁のもらい手があってよォ」
新八の話を聞いた後の銀の一言。
「帯刀してたってこたァ幕臣かなんかか?玉の輿じゃねーか。本性バレないうちに籍入れとけ籍!」
「銀、それは」
言うと怒られるよ、と言いたかったけど遅かった。
「それどーゆー意味」
…怒るとかそんなレベルじゃなかったんだったこの人!
お妙によると、その男はかなり異常らしい。
というかストーカー。
「んだよ、それで俺にどーしろっての。仕事の依頼なら出すもん出してもらわにゃ」
「銀さん、僕もう2ヶ月給料もらってないんスけど。出るとこ出てもいいんですよ」
「すいませーん…」
冷たい新八の正論に、次の瞬間からは既に銀は動いていた。
「ストーカーめェェ!!どこだァァァ!!!成敗してくれるわっ!!」
「こんなとこにいるわけないでしょ」
「なんだァァァ!!やれるものならやってみろ!!!」
テーブルの下から出てくる男。
「………」
「ほんとにいたよ」
「ストーカーと呼ばれて出てくるとはバカな野郎だ。己がストーカーであることを認めたか?」
「人は皆愛を求め追い続けるストーカーよ」
「全然うまくないんだけど」
「ときに貴様、先ほどよりお妙さんと親しげに話しているが、一体どーゆー関係だ。もう1人可愛い子もいるし、うらやましいこと山の如しだ」
「私アルか」
「いやさんのことだから」
「虫唾がはしるね」
いやー、気持ち悪いな。
と思っていると、お妙は笑顔で話しだした。
…営業スマイルだ。
「許婚ですぅ。私この人と春に結婚するの」
「そーなの?」
「んなわけねェだろ」
「だよねー。俺にはという嫁が」
「誰がアンタの嫁?絶対やだ」
「え、ちゃん冷たくない?最近俺に対して冷たくない!?」
銀と話している内に勝手に話がすすんでいたようで、男の勝手な妄想は広がるばかり
迷惑なことこの上ない。
「決闘しろ!!お妙さんをかけて!!」
場所は変わって河川敷。
「得物はどーする?真剣が使いたければ貸すぞ。お前の好きにしろ」
「…真剣一本しか持ってないのにどーやって貸すんだか」
「あ、ホントだ」
結局銀は、男に木刀を貸し、銀は新八から木刀を借りた。
「…怪しい」
「はい?」
「いざ!!尋常に、勝負!!」
勝負は始まってしまったが、私の予想は的中。
銀が貸した木刀は先が折れ、混乱する男は一発でやられてしまった。
「よォ〜、どうだいこの鮮やかな手ぐ……ちゃぶァ!!」
神楽と新八が銀に攻撃。
「あんなことまでして勝って嬉しいんですか。この卑怯者!!
「見損なったヨ!!侍の風上にも置けないネ!!」
…とりあえず神楽には後で言っておこう。
銀を侍の風上に置いたら他の侍が可哀想だってこと。
「お前姉ちゃん護ってやったのにそりゃないんじゃないの!!!」
「もう帰る。二度と私の前に現れないで」
「しばらく休暇もらいます」
あーあ、まったくうちの従業員どもは勝手に休暇とか言っちゃって
「フフ…」
「あ、お妙帰るの?」
「ええ、銀さんによろしく」
「あー、うん。また今度一緒にお茶でもしよ!」
「楽しみにしてるわ」
お妙が去った後、私は橋から飛び降りて、銀のところに向かった。
「おっつかれー」
「…おーう」
「傷だらけっていうより泥だらけじゃん」
「銀さん名誉の負傷な」
「ばーか。そんなこと言ってたらおいてくよ」
「ちゃん待ってェェェ!!!」
「まったく世話のやける」
「なあ、万事屋帰る前にどっかよってかね?」
「アンタさっき金持ってきてないって言ってなかった?」
「…あ」
「…パフェでいいの?」
「…おう!!最高!!」
「あほか。糖尿病ほんとになっても知らないからね!」