「じゃあ行ってくるわァ」

「いってらっしゃーい。弁当は後で持ってくからさ、しっかり働いてこいよー」

「おう」




























第九訓  喧嘩はグーでやるべし





























昨日の夕方、久々に仕事が入った。

集英建設のおじさんからだ。

なんでも、人手が足りないらしい。

銀をよこせといわれたけど、あんなちゃらんぽらん1人をやるだけだともしかして仕事が成立しないかもしれないので、私も弁当届けるついでに手伝うことにした。












































「銀ー」

「おー。もう弁当?ちょっと早くね?」

「いや弁当はまだ食べないよ。持ってきたついでに手伝おうと思って」

「え、何?代わってくれるの?」

違うから。アンタ1人じゃ頼りないなーと思ったから手伝うだけだし。アンタも働くの。いい?」

「はーい」

「ってちょっと!言ってるそばから!!」



「あじゃない!」





























銀のそばにあった鉄材が、下に落下していく。

下からは声がする。




























「おーい兄ちゃん危ないよ」

うおわァァァァァ!!




























やっぱり人がいたらしい。































「あっ……危ねーだろーがァァ!!」

「だから危ねーっつったろ」

「もっとテンション上げて言えや!分かるか!!」




























下の人はやっぱり怒ってるみたいだけど様子からして怪我はないみたいなので放っておくことにした。



























「あ”あ”あ”あ”あ”!!てめーは…池田屋のときの…」

「何ー?銀知り合ーい?」




























下をのぞくとどこかで見たような二人組。

とりあえず下に下りてみる。





























「てっ…てめぇもこの前の!!」

「はい…?」

「何?の知り合い?俺お前に男いるなんて知らねェぞ」

「違うし。つーか男いたとしても何でアンタに教えないといけないの」

「バカヤロー他の男にをやれるか」

「アンタは私の父さんか」




























「オイてめぇら無視かコノヤロー」

「…すいませんがどちらさまでしょう。いつかお会いしましたっけ?」

「あ、もしかして多串君か?アララすっかり立派になっちゃって。なに?まだあの金魚デカくなってんの?」

「え、多串くんだったの?そーゆーことなら早く言ってよー」

「おーい銀さん!!早くこっち頼むって!!」

「はいよ。じゃ多串くん、俺仕事だから」

「ちゃーん!手伝ってくれるかー!!」

「いいともー。じゃーねー、多串くん」





























上に上って少しすると、多串くんがやってきた。


























「爆弾処理の次は屋根の修理か?節操のねェ野郎だ。一体何がしてーんだてめェは」

「爆弾!?あ…お前あの時の!」

「あぁ、そういえばそんなことも…」

「あれ以来どうにもお前のことがひっかかってた。あんな無茶する奴ァ、真選組にもいないんでね。近藤さんを負かす奴がいるなんざ信じられなかったが、てめーならありえない話でもねェ」

「近藤さん?」

「女取り合った仲なんだろ。そんなにイイ女なのか。俺にも紹介してくれよ」




























そういって、確か…土方…さんだったっけ?は右手に持った刀を銀に投げた。





























「女とりあうって…もしかして」

「お前あのゴリラの知り合いか?…にしても何の真似だこりゃ…」





























言いかけている最中に、突然切りかかる土方さん。


























「銀っ!!」

「おいお前」

「…何よ」

「どっか行ってろ、怪我するぜ」

「…なめないで」

「…、離れてろ」

「…大丈夫なの?」

「おう」

「そ。じゃあお言葉に甘えて」




























銀が言うからにはどくしかない。

私は隣屋根に移る。

その何棟か隣に、総悟と、あのゴリラがいた。






























「ちょっと、アンタら!!」

「じゃないですかィ。追い出されたんですね」

「うるっさいな。ね、出るんだよね?」

「…何が?」

「あの壊れた瓦の修理費。お宅の人が始めちゃったせいでどんどん壊れてんのよ」

「いや、でも…」

ん?何?何か文句でもあるのかなストーカーさん

「いえ、すんませんっしたァァァ!!!」

「で、出るよね?」

「出させていただきます!!!」

「お願いしまーす」





























「アンタ、何気に黒いですねィ」

「多分アンタほどじゃないよ」






























大きな音がして、見ると、土方さんの刀が折れていた。





























「…終わった?じゃ、私あっち行かなきゃいけないから、じゃあね!あっ、修理費忘れんなよ!!」





























かけよると、銀は言った。





























「俺、ちょっと病院行ってくるわ」

「大丈夫?」

「おう。ちょっとまかせていーか?」

「うん」






























銀を見送った後、私は作業に入る前に、その辺に転がっているアイツに声をかけた。





























「土方ァァァァ!!」





























もうこの際「さん」なんてつけない。




























「おぉぅっ、びっくりした…!!何だよ」

「何だよ?うん、瓦敷くの手伝って」

「あ?何で俺が」

「周りよく見て。このあたり一面、破壊されてんだけど」

「いやでもあいつが壊したとこもあんだろ」

誰のせい?

「…ちっ」

「舌打ちしない!」






























結局頼まれた分が終わるまで、手伝ってもらいました。

アンタの仕事なんてしるか!