「受験戦争、親との確執、気になるあの子。とりあえずカルシウムとっときゃ全てうまく…」
「いくわけねーだろ!!幾らカルシウムとってたってなァ、車にはねられりゃ骨も折れるわ!!」
「はいはい落ち着いて新八君。花瓶の花かえてきてあげるから」
第十一訓 べちゃべちゃした団子なんてなぁ団子じゃねぇバカヤロー
「…で、何でこうなったの?」
「だから死にかけのじーさんが、こうぐわぁっと迫ってきてだなァ」
「へえー。でもこんなん見つかるわけなくない!?」
「何、俺の今のジェスチャースルー!?」
「団子屋『かんざし』?そんなもんしらねーな」
とりあえず誰かに聞いてみようということで、同じ団子屋さんに入って団子を食べながら聞いてみた。
「昔この辺にあったって聞いたぜ」
「ダメだ俺ァ、三日以上前のことは思い出せねェ。それよりよォ、銀時お前たまったツケ払ってけよ」
「その『かんざし』で奉公してた綾乃って娘を探してんだ。娘つっても五十年も前の話しだから今はバーサンだろうけどな」
「ダメだ俺ァ、四十以上の女は興味ねーから。それよりよォ、銀時お前たまったツケ払ってけよ」
「今日もつけといてくれ」
「おじさん、今日の分は私払うよ」
「ちゃんは偉いよねェ」
「銀がツケた分はコイツに払わせてね」
「おう」
今日の代金だけ払って、その店を後にする。
「今度は定春使ってみるアル!」
「え…」
神楽はじーさんに預けられたかんざしを定春にかがせる。
歩き出す定春についていく私たち。
「オーイ、さすがに無理だろコレ。五十年もたってんだ。においなんか残ってるかよ」
「わからないアルヨ。綾乃さんもしかして体臭きつかったかもしれないアル」
「バカ。べっぴんさんってのはみてーに理屈抜きでいい匂いがするものなの」
「なんでそんなこと知ってるアルか」
「おまっ、俺とがどんだけ一緒にいたと思ってんだ」
「私なんてどーでもいいでしょうが」
「いや…でもべっぴんのくせに体臭きついってのも…いやいや、俺は一筋だからねェェェ!!」
「知るか」
「酷ッ!!…ん?オイ定春!お前家戻って来てんじゃねーか!!!散歩気分かバカヤロー!!」
バン、と定春は前足で戸をたたく。
その戸はスナックお登勢の戸だった。
「オイ…まさか」
「なんだよ、家賃払いに来たのかィ。お前こちとら夜の蝶だからよォ、昼間は活動停止してるつったろ。来るなら夜来いボケ」
「……」
「……いやいやこれはないよな」
「ナイナイ」
「綾乃ってツラじゃねーもんな」
アハハと笑うがお登勢さんの一言でその場は静まる。
「なんで私の本名しってんだィ?」
「…うそだぁ…」
「ウソつくんじゃねェェェババァ!!おめーが綾乃なわけねーだろ!!百歩譲っても上に『宇宙戦艦』がつくよ!!!」
「オイぃぃぃ!!メカ扱いかァァァ!!」
「宇宙戦艦綾乃…」
「お登勢ってのは夜の名…いわば源氏名よ。私の本名は寺田綾乃っていうんだィ」
「なんかやる気なくなっちゃったなオイ」
「うーん…」
「なに嫌そうな顔してんだコラァァァ!!」
プルル。
店の電話が鳴った。
「ハイ、スナックお登勢………なに?いるよ銀時なら。新八から電話」
「なによ」
「なんかジーさんがもうヤバイとか言ってるけど」
「え!?」
「チッ」
「お登勢さん…来てくれない!?このかんざし、あなたのでしょ!!?」
「これ…どこで…?」
「いーから話は後だ!乗れババァ!定春、病院に突っ込むぞ!」
「ワン!」
お登勢さんには定春の上で事情を話した。
定春は、銀時が言った通りに病院の窓から突っ込んだ。
「ここからつっこむの!!?」
「しっかりつかまれよ!!」
ジャストその部屋だったんだけど、ガラスが飛び散り、中にいた医者や新八は驚く。
「おいじーさん、連れて来てやったぞ」
「いっ!?お登勢さん!?」
「先生ェェェ意識が…!!」
「オイきーてんのかジーさん」
「ちょっ、何やってんの君ィィィ!!」
「死にかけはたいちゃダメでしょ!!」
「君も本人の前で死にかけとか言わないィィ!!」
「かんざしはキッチリ返したからな…。見えるかジーさん?」
ジーさんは朦朧としながらも、しっかりと話した。
「…綾乃さん。アンタやっぱ…かんざしよく似合うなァ…」
「…ありがとう」
それからゆっくり、ジーさんは息を引き取った。
新八を残し、私達は病院を後にした。
「…バーさんよォ、アンタ、ひょっとして覚えてたってことはねーよな?」
「フン。さあね、…さてと、団子でも食べにいくとするかィ」
「ん…、ああ」
「どーしたの、銀」
「…いや、何でもねェや」
「あっそー」