「いやあ…いつもごめんねお登勢さん」
「アンタはわりとキッチリやってんじゃないか。悪いのは銀時さ」
「ジャア行ッテキマス」
「頼んだよ」
「キャサリン行ってらっしゃーい」
第十六訓 昔の武勇伝は三割増で話せ 盛り上がればいいんだよ 盛り上がれば
家賃をいつまでも払わない銀に痺れをきらしたのか、お登勢さんはキャサリンを万事屋に派遣した。
しばらくして、万事屋…今私がいるスナックお登勢の上の階から3人分の悲鳴が聞こえた。
「まったく…やつは何やってんだろうねェ」
「何もやってないからお金がないのよお登勢さん」
「…年下のアンタにばっかり払わせて…」
「年下っていっても私ももう一社会人だし、同居させてもらってるからにはねェ…」
「アンタもなんでアイツなんかと暮らしてんだィ?」
「うーん………、面白いこと、いっぱい知れるからかなァ…」
「フン…アンタも相当変わり者だね」
「よく言われる」
キャサリンに連れられてきた3人は、結局掃除をさせられることになった。
「なんでだけ掃除回避してんだよババア」
「それはね銀、ここで唯一家賃払ってるのが私だけだからよ」
「…そうでした」
「とにかく、金がないなら働いて返してもらうよ」
「ソレガ終ワッタラ私ノタバコ買ッテキテ」
「てめーも働けっつーの!」
「しかしバーさん、アンタも物好きだねェ。店の金かっぱらったコソ泥をもう一度雇うたァ。更生でもさせるつもりか?」
「そんなもんじゃないよ。人手が足りなかっただけさーね…」
「盗み癖は天然パーマ並みにとり難いって話だ。ボーッとしてたらまた足元すくわれるぜ、バーさん」
「……大丈夫さ。あの娘はもうやらないよ。約束したからね。それよりお前も働…………」
「…銀のばかやろー」
「、アンタアイツの分まで働きな」
目を離したすきにいなくなった銀。
最悪だー。
「ズルイヨ銀ちゃん。一人だけ逃げるなんて…おかげで私達仕事量倍ネ」
「私も手伝わなきゃなんないし…ありえない!」
「もう部屋は貸さないって…お登勢さん怒り狂ってたよ。僕らどーなるんだろ」
「さァねェ…」
「コノダンボールアゲマショーカ?」
「住めってか!それに住めってか!」
「ふざけるなヨ!こんなものに住めるわけない!」
「そうよ、ふざけんじゃないっつーの!」
「Lサイズにしてヨ!」
「そこじゃねェよ」
「オ登勢サンニ迷惑カケル奴ハ私許シマセン。家賃モ払ワナイオ前ラナンテダンボールト一緒ニ廃品回収サレレバイイ」
それを皮切りにとっくみあいが始まった。
もちろん私は傍観者。
巻き込まれた新八が可哀想だ。
「オゥオゥ、元気そうだなキャサリン!」
変な奴が近寄ってきたことも気づいたけど、放っておいた。
「コラコラ神楽。そろそろやめてやんな」
「わかったアル」
「…死ぬかと思った。……さん」
「分かってる。いってみようか」
「はい!」
男と一緒に歩いていくキャサリンの後をつけると、その男はなにやら危ない話を持ち出した。
「丑の刻、三丁目の工場裏でまってるぜェ…」
「さん…お登勢さんに言わないと!」
「え、言うの?」
「なんで疑問形なんですか!」
「いやでも、これは本人の問だ……っていないし」
とりあえずスナックまで戻ると、2人はもうすでに話し終わったところだった。
「へェー、そうなんだ」
「お登勢さん…、あっさりすぎるよ」
「ほっとけほっとけ」
そんなとき、入ってきたのは銀だった。
「芯のない奴ァ、ほっといても折れていく。芯のある奴ァ、ほっといてもまっすぐ歩くもんさ」
「またパチンコ行ったの…?」
持っていた袋から取り出したものは…
「お天気お姉さんのフィギュアだ。俺の宝物よ。これでなんとか手を打ってくれ」
投げ飛ばされた銀。
そりゃそうだ。
「ねェお登勢さん、ちょっと行ってみようよ」
もともと行くつもりだったらしいお登勢さんからはYESの返事。
行ってみると、そこではもう銀が暴れていた。
「まったく…また暴れちゃって…」
「どうですかね、家賃三ヶ月分ぐらいの働きはしたんじゃないですか?」
「ハァ…バカかお前は。一月分だよ…」
「やったありがとうお登勢さん!」
「来月はきちんと払ってもらうからね、溜まった分も」
「そりゃないぜぱっつぁん」
「何で僕!?」
こうして無事に解決しました。
もちろん銀は逃げたときの制裁としてぼこぼこにされました。