「依頼…ですか」

「オイオイ、金は払うんだろーな?」

家賃は払ってくれんのかィ?…騒音を止めて欲しいんだよ」

「騒音?」

「そうさね」






















第二十訓  音楽なんて聴きながら受験勉強なんてできると思ってんのかお前は!もう切りなさい!





















「オイヤローども、やっちまいな!」






















場所はとある工場前。

私達がその騒音を止めるために用意したのは、1本のマイクとデッキだった。






















「あ、みんな、耳塞いでね」

「は?」






















歌いだした新八。

私も最近知ったことだが、新八は音痴だった。

それも、相当の。多分ジャイ○ンと張り合えると思う。






















「おいィィィ!!止めろコラ!!私は騒音止めてくれって言ったんだよ!増してるじゃねーか!二つの騒音がハーモニー奏でてるじゃねーか!!」

「いじめっこ黙らすには同じようにいじめんのが一番だ。殴られたこともない奴は人の痛みなんてわかりゃしねーんだよ」

「わかってねーのはお前だァ!こっちゃ鼓膜破れそうなんだよ!」

「何言ってんだバーさん、一番痛いのは新八だ。公衆の面前で音痴晒してんだから」

なんか気持ちよさそーだけど!!

「あれまホントだ」






















そうこうしている間に神楽と新八のマイク争奪戦が始まった。





















「あ〜あ、何やってんだあいつらしょーがねーな。オイ!次歌うのは俺だぞォォ!!

ちょっと!私が歌うって言ったじゃん!!

おめーら一体何しに来てんだァ!!






















的確なツッコミ。





















「もういい、てめーらの歌聴くぐらいなら自分で歌う!貸せ!」

「てめーの歌なんて聴きたくねーんだよ腐れババア黙ってろ!」

「なんだとォォ!!じゃあデュエットでどうだコノヤロー!!」

「ツッコミどころ違うって」






















5人で争う間に、シャッターが開いた。





















「!」

「か…カラクリ!?」

「え…これが平賀さん?」






















平賀サンは銀の頭を掴んで持ち上げる。





















「うわっ、銀!?」

「ちょっ…いだだだだ!助けて!!」

「止めろォォォ平賀サン!」

「たわけ、平賀は俺だ。人んちの前でギャーギャー騒ぎやがってクソガキども。少しは近所の迷惑も考えんかァァァ!!」

そりゃテメーだクソジジー!!!






















平賀サンは、普通に老人だった。

良かった…、カラクリじゃなくて。






















「オイ三郎!かまうこたァねェ、力ずくで追い出せ!」

「御意」






















カラクリ…三郎は銀をおおきく振りかぶって…投げた。

工場の中に。

そして平賀サンも巻き込まれてしまった。






















「よし、平賀サンを縛っておこう」

「御意アル」

「なんでそんな冷静なの?」






















***





















「うわ〜カラクリの山だ。これ平賀サンが全部つくったんですか?」






















工場の中にはたくさんのカラクリ。

全部ごっつい大型だ。






















「てめーら何勝手に引越しの準備進めてんだァ!ちきしょォォ!!縄ほどけェェ!!」

「オイ茶、頼むわ」

「あ、私も」

「御意」

「三郎ォォ!!てめェ何こきつかわれてんだァ!助けんかい!」

「いや〜実にいいモノつくってんじゃねーかジーさん」

「うちにもひとつほしいよね」

「ってわけでくんねー?このポンコツくん。…あれ?」






















見ると銀の頭にお茶が…。





















「あっつァァぱァァ!!」

「うわっ、こっちこないで熱い!」

「ブハハハざまーみろォォ!三郎はなァ、ある程度の言語を理解できるんだよ。自分に攻撃的な言葉や行動をとる奴には鉄建で答えるぞ!」






















平賀サンはその後自分でポンコツと言ってしまい鉄拳を食らう。





















ばかじゃないの?






















「お登勢さん、あの人ホントに江戸一番の発明家なんですか?」

「あん?なんかそーらしいよ。昔っから好き勝手ワケのわからんモンつくってるだけなんだけどね。私らにゃただのガラクタにしか見えないね〜」

「ガラクタなんかじゃねェ。ものを創るってのは自分の魂を現世に具現化するようなもんよ。こいつらはみんな俺の大事な息子よ」

息子さん、あっちで不良に絡まれてるよ

「びゅ〜ん!」

「いやぁぁぁぁ!!」

「ロケットパンチ発射アル!」

「止めてェェェ!!そんな昨日ないから!腕もいでるだけだから!」

「子供は無邪気だね〜」

「アンタも見てねェで止めろォォ!」






















***





















「さて、引越し完了ー」

「ここなら幾ら騒いでも大丈夫だろ。好きなだけやりな」






















場所は河原。





















「好きなだけってお前…みんなばらばらなんですけど」

「だって重いじゃん、完全体だと」

「…なんてことしてくれんだテメーら。どーすんだ、これじゃ祭りに間にあわねーよ」

「「「祭り?」」」






















平賀サンが言うには、三日後、ターミナルで行われる祭典でカラクリ芸を披露するよう幕府から命が下ったらしい。






















「間に合わなかったら切腹モンだぞ」

「あっヤベ、カレー煮込んでんの忘れてた」

「いっけね、こげちゃうよ」

「オイィィ!三郎の腕返せェェェ!!」

「あ、神楽ダメじゃん。返してきな」

「わかったアル」






















そして神楽を待つ間、ふと感じた視線。





















「…?」

「どうした?」

「いや…、なんでもない」

「…そうか?」






















きっと…気のせいだ、と自分に言い聞かせる。





















「こんなとこにいるはずないってね」

「オイ行くぞ!」

「待ってよ!」






















小さな胸騒ぎに蓋をした。