「じゃあ私、ちょっと行ってくるけど、ちゃんと手伝いするんだよ」
「も早く戻ってくるアル!」
「まあ頑張るけど、向こうは祭りの手伝いだからね」
平賀サンの手伝いに来ていた万事屋でしたが、仕事の依頼で私だけ抜けることに。
屋台の客引きに来て欲しいそうで、お祭りだから浴衣を着て来いとのこと。
「浴衣なんて久々だけど…、まあ着れるよね」
第二十一訓 事件は悪い奴が起こすんじゃない はしゃぎすぎた奴が起こすんだ
「いや〜、キレイな娘がいると屋台は儲かるねー、助かるよ、ちゃん」
「ほめても何も出ないよおじさん」
「本心さね」
「はいはい、じゃあ私もう行くね」
「おう、ありがとな!コレ、今日の依頼料だ!」
「え、こんなに!?私客引きしかしてないよ!?」
「今日は祭りだ!奮発しとくよ」
「ありがとおじさん!また仕事頂戴ね!」
「ああ」
日も落ちて祭りが盛り上がった頃、多分もう大丈夫だ、ということで仕事も終わった。
祭りに来ているだろう万事屋メンバーを探す。
「ってアレ?ジミーじゃん」
「へ…!?」
「どうしたの?仕事?」
「えっと…どちら様で?」
思いも寄らない言葉に首を傾げる。
「ジミーに忘れられるほど、私地味だっけ?」
「その声…もしかして、さんですか!?ていうか地味って…!」
「?分かんなかったの?」
「いや、何だかいつもと雰囲気違いますね」
「そうかなー、浴衣着てるからじゃない?」
黙ってしまった山崎を見ると、手には…
「…たこ焼き?」
一瞬きょとんとした山崎はその後頷く。
「私も食べたいなー」
「あ、食べますか?」
「いいのー?じゃあ一つもらってもいい?」
「どうぞ」
山崎から一つもらう。
「おいしー…。私買いに行こーっと」
「あ、あげますよコレ」
「いいよいいよ、自分で買うし。どこで売ってた?」
「たこ焼きは向こうに…」
「ありがとー。じゃあ行ってくるね!ジミーも仕事頑張って!」
「ありがとうございます!」
笑顔で手を振ると、ジミーも手を振ってくれた。
たこ焼きくれたし、今度はちゃんと山崎さん、って呼んであげよーっと。
「よーし、たこやきたこやきっと」
「ククッ…相変わらずガキだな、たこやきでそんなにはしゃぐか?」
「!」
聞こえてきた声に驚く。
「よォ、幕府の連中とも仲良くしてるみてーじゃねェか。アイツ、誰だ?」
「…晋助?」
「…んだァ、その目は。そんなに俺が珍しいかァ?」
「…なんで、こんなところに」
「祭りがあるって聞いてな」
「祭り好きもいい加減にしないよ死んじゃうよ?」
「ヅラも同じこと言ってたな」
高杉晋助。
彼も昔、戦で一緒に戦った仲間だ。
「生きてたんだな」
「…当たり前じゃない」
「ククッ…そりゃそうだ。お前はあんなことぐらいで死ぬ女じゃねェ」
今は過激派攘夷浪士として世間を騒がせている。
「しかし、見ねェ間に随分と女らしくなったじゃねェか」
「…それはどうも」
まさか、こんなところで会うとは思わなかった。
「」
ふと呼ばれた私の名前。
俯いていた顔を無理矢理上げられる。
「俺と一緒に来ねェか?」
口をぎゅっと結ぶ。
「銀時みてェなバカの元にいるには、お前はもったいねェ」
まっすぐに向き合う。
「銀は…。銀は大切だよ。捨てられない。失いたくない。仲間も、友達もたくさんできた。私はここで、みんなを護りたい」
しばらく見つめ合う。
「お前は……相変わらずなんだな」
晋助はそういって、舌打ちした。
私の手が力強く引かれる。
「え…」
唇に、柔らかくて、冷たいものがあたる。
「ん…っ!?」
すぐに離れると、晋助は人ごみの中に消えてしまった。
「……。あ、銀!」
私に声をかけた、ってことは、銀にも会ったか、もしくは会うつもりなんじゃないだろうか。
「とにかく、銀を探そう!」
一歩踏み出すと、空には大きな華が咲いた。
嫌な予感が頭を過ぎる。
「まさか、…平賀サン!」
私は目的地を変え、将軍がいるはずの櫓に向かって駆け出した。
いつもと違う、浴衣が動きにくい…!
「間に合うといいけど…!!」
そう呟いたのと、三郎が櫓に向かって大砲を向けるのは、ほとんど同時だった。