「やばっ…やっぱりそうだったんだ…!!」






















三郎が始めに撃ったのは、煙幕だった。





















第二十二訓  親子ってのは嫌なとこばかり似るもんだ





















お登勢さんから聞いていた。

彼の息子は戦に出て殺された後、その首は川原に晒されたのだと。

そんな人を嗾けることなんて、赤子の手を捻るぐらい、晋助には簡単なこと。






















「平賀サン…!!」






















ジミーにも遭遇したから、きっと向こうで現れたカラクリと戦っているのは真選組。

将軍はきっと、もう逃げたはずだ。

やっとの思いで戦場にたどり着くと、帯に隠し持っていた小太刀を抜いた。

カラクリは堅いが間接部分を狙えば脆い。

動きはいつもより遅いけど、十分なはず。






















「アンタ何やってんだ!」






















後ろから手を引かれる。





















「うわっ…」






















「一般人は早く逃げろ!」

「…ひ…土方コノヤローじゃないですか」

「…!?お前、もしかしてか!?」

「そうだけど…。ていうか手を離してくれる?今にもカラクリに襲われそうなんだけど」

「うおっ…!」






















間一髪で避ける。

そして小太刀でそのカラクリを壊す。






















「アンタのせいで危なかったじゃん!」

「お前がそんな格好でこんな場所にいるからだろーが!!」

「何でも私のせいにしないでくれる?そういうの、責任転嫁っていうんだよ?」






















こんな会話をしているが、戦闘中である。





















「アレ?じゃねェですかィ」

「総悟じゃん」

「今日はなんだか違いやすね」

「そう?ジミーにも言われた」

「ジミーに会ったんで?」

「うん、さっきね」

「よし、後でとっちめまさァ」

「どーでもいいけど、先にカラクリとっちめようね」






















ステージの方では銀が三郎と向き合っている。

そろそろ決着がつきそうだ。






















思ったとおり、それから少しして決着がついた。

三郎が撃つのをやめたのだ。






















「三郎…」






















銀が三郎を壊すと、他のカラクリたちの動きは止まった。





















「終わったみたいですねェ」

「そうだね…」






















周りには、近藤さんの愛刀、虚鉄ちゃんが折れたとかで嘆いていたり、それを慰める隊士たちがうろうろしていた。





















「あ!?主犯がいねェだと!?」






















隊士が土方に報告する。

隊士が駆けつけたときには、もうすでに平賀サンの姿はなかったそうだ。

ステージに近づき、銀と新八に声をかける。





















「大丈夫?」

「ああ」「はい」






















2人とも、それ以上は喋らなかった。

新八は自宅に帰り、神楽は着いた途端爆睡。






















私と銀は、布団に入ってしばらく黙っていた。





















「ねェ…」






















先に口を開いたのは私だった。





















「今日ね、晋助に会ったよ」






















少したってから返事が来る。






















「あァ…俺もだ」

「…相変わらず、だったね」

「…そうだな。………って待てよオイ

「…何よ」

「お前、アイツに会って何かされただろ」

「…は?なんでそんな」

「なんかアイツが気になることいいやがってよォ…。で、何されたんだ!?」

あまりにマジな目で言う銀。

シリアスムードは跡形もなく消えてしまったけど、なんだか微妙に(銀だけ)シリアスだった。






















「…何って…、一緒に来ないかって言われて…」

「それで…?」

「断ったよ」

「そりゃわかってらァ!が銀さんの傍を離れるわけないもの!」

何で断言してんだよ

「その後何されたんだって聞いてんの!」

「………」






















今更ながら思い出すと顔が火照る。






















「……き……」

「き…?きっ……キスだとォォォ!?

「バカ声がでかい!てか何でそんだけで理解してんの!?

「どこにされたんだコノヤロー唇かコノヤロー!」

「…うるさい黙れ神楽が起きるわァァァ!」

「唇なのか!?そうなのかァァァ!?」

「もう!私寝るから!おやすみ!!」






















「ちょッ、!?」

その後何度も声をかけてくる銀。





















もう寝るって言ってんじゃん!何!?

「こっち向け」

「いや」

「こっち向け」

「いーやっ」

「こっち向けって」

「もううるさいってば……!」






















油断して振り向くと、その距離0cmのところに銀の顔があった。






















「消毒」






















舌で唇をちろっと舐める動作を見て、顔が熱くなる。






















「どーしたァ?顔が赤いんじゃねェの?」

「…銀の…」

「…?」

銀の変態ィィィ!!!






















大声を出して銀を投げても、神楽が起きなかったこと。

私はそれを、奇跡と呼びたい。