いてもたってもいられなくなって下に降りると、ババァが話しかけてきた。
「アンタ、に何かしたのかィ?」
開いている戸からスナックを覗いてみると、ひらひらと手を振るクソガキが2人。
「…たく、どこ行きやがったかと思ったら…」
こんなとこで油売ってやがった。
第二十五訓 喧嘩の仲裁は両方の意見を聞いてから
「ったく、何やってんだィ、ガキの前でみっともないと思わないのかィ?」
「俺だって好きでこうなったんじゃねーよ」
何度も何度も「何したんだ」と聞かれても答えない俺に、ババアは諦めたみたいだ。神楽や新八はもうすでにすなっくを去った。
「あの子が何で怒ってるのか、心当たりはあるんだろ?」
「…まァ、なー…」
「何だィその歯切れの悪い返事は」
あるといえばある、というか確実に原因はアレなんだろうけど、どうもしっくりこねーんだよな。普通そんな怒るか?俺もしかして実は嫌われてる?友達にするなら坂田くんはいいと思うけど、そういう関係は無理、みたいな?
「…まさかアンタ、を襲ったんじゃないだろうねェ?」
「………………」
「はァ…、バカだねアンタ。アンタなら大丈夫だろうと思って口出さないでやったのにさ」
「待て待て待て待て、襲ったまで行ってねェよババア勝手に解釈すんじゃねェ!!」
「どっちにしたって、は嫌だったんじゃないのかィ?」
あー、ちくしょう空は青いなオイ。俺のことなんか知ったこっちゃねェってかコノヤロー。
ババアのところを出て、俺は街をぶらぶら歩く。そしてちょうど目に入った甘味処。
「オイオイ銀さん、今日はちゃんと金持ってきたんだろーな」
「つけといてくれよ」
「まったく…。あ、そういえばな、さっきちゃん来てたぞ」
「が来た?」
「ああ、珍しく一緒じゃねェんだな、って声掛けたら、複雑そうな顔してたぜ。喧嘩でもしたかァ?」
「あ?余計なお世話だクソジジー」
おせっかいなジーさんの店を後にして、再び街を歩く。
「あら?銀さんじゃないですか」
そんな声に振り向くと、志村新八の姉、妙がいた。
「ちゃんもさっき見かけたんですよ」
「え?お前も見たの?」
「ええ、ゴリラを始末した後、飼育小屋に連れて行ってくれてるの」
「へー、そうなの。…って待てよオイ、飼育小屋ってお前あいつらのとこじゃねェか!」
「ちょっ、銀さん!?」
つまり真選組だ。男の巣屈だ。そんなとこに可愛い可愛いが行っちまったら…
「危ねェじゃねェかァァァァァァ!!!」
向かった先は真選組屯所。マヨ野郎なんかがいるところには行きたくねェが、が行ってると聞けば黙っちゃいられねェ。
「あァ?てめー何しに来やがった」
「お前に用はねェんだよ大串くん」
「誰が大串だァァァ!」
屯所に来てまずあったのが奴だった。相変わらず瞳孔が開いた危ない奴だ。
「あれ?旦那じゃねーですかィ、どうしたんです?こんなとこまで」
「ここに来てるって聞いてな総二郎くん」
「総悟です。ならさっき帰りやしたよ」
「オイコラてめー俺のことは無視か」
「旦那、土方さんが旦那に構ってもらいたいみたいでさァ」
「え、俺男を構う趣味はねェんだけど」
「誰がそんなこと言った総悟!」
2人はいつものように喧嘩しだした。
…というか俺帰っていい?
「万事屋じゃないか、何やってんだこんなところで」
障子を開けて、例のストーカーが出てきた。…その目のあざその他諸々は誰がやったかなんてすぐ分かる。
「なんでもねーよゴリラ」
「え?今ゴリラって言った?ゴリラって言った?」
「俺もう帰るからアイツらの始末は任せた」
「アイツらって…また喧嘩してんのか…」
真選組を後にして、また俺は街を歩く。
その後も何人か知り合いに会ったが、を見たという話は聞かない。
…うちに帰ったか…?
その頃、スナックお登勢
「こんにちはー」
「じゃないかィ」
「お店開ける手伝いしに来ましたー」
「…、いつもいつも助かるよ。こっち来な」
「はーい」
気を紛らわすために出かけたのはいいけど、結局心の中のもやもやはとれなかった。やっぱり出かけるだけじゃなくて何か仕事をして、悩みなんてふっとばしたい。そう思って午後3時半過ぎ、自分の住む家の下にある、お登勢さんの店を手伝いに来た。
声をかけた時のお登勢さんの反応は、何か含みがあるものだったから、もしかして、この騒動は神楽や新八、もしくは銀から聞いているのかもしれない。
「はァ…」
ため息をついてから、私はお登勢の後に付いて行った。