気を紛らわすための手伝いの中、お登勢さんと世間話。

会話の途中にはやはり沈黙はあるわけで、結局手伝いが終わっても目的は果たせなかった。





















第二十六訓  年寄りの知恵は馬鹿にできない





















「ほら、茶だよ」

「あ、ありがとうお登勢さん」






















カウンターの席に座り、出されたお茶の湯飲みに両手を当てる。





















「熱いから気をつけんだよ」

「うん」






















注意しながら口に入れても、やはり熱かった。

…やけどしたかな?





















「」





















名前を呼ばれ、カウンター越しのお登勢さんを見上げる。





















「なーに?」






















ふう、と一息ついた後、お登勢さんは言った。





















「銀時と何かあったんだって?」






















お登勢さんは誤魔化さずストレートに言ってくれるから好きだ。知っているくせにごちゃごちゃと遠まわしに言われるのは嫌いだから。





















「やっぱ聞いてるよねー」

「この期に及んで何があったか聞くような野暮な真似はしないよ」

「…うん」






















再びお茶に口をつける。





















「別にね…、私だって怒ってるわけじゃないんだ」

「そうかィ」

「自分でもよく分かんないんだよね」






















キャサリンが出かけているせいで、店には今2人しかいない。声も響くし…、こんなに広い店だったっけ?





















「嫌だったのかィ?」

「…え?」

「……アイツになんかされたんだろ?」






















よくよく考えてみれば、私は嫌だったのかな?そこまで頭が回ってなかったことに気づき、私は首を捻って考える。





















「嫌…だったわけじゃない気がする…」

「そうかィ。じゃあアンタは何が気に入らなかったんだィ?」






















いつだって思うけど、お登勢さんはすごい。こんな風にわけのわからない感情も、お登勢さんと話すとすぐに解れていく。私に母親なんていないけど、『お母さん』っていうのはこんな感じなのかな、とか思ったりする。





















「…、アンタはどう頑張ったって銀時の歳を上回ることなんてないさ。でもアンタだって大人にはなるだろう?アイツみたいなバカにはちゃんと話さないと分からないさ」

「…お登勢さん」






















…そう、だよね。分かってもらいたいなら話すしかないよね、うん。





















「あの…、ありがとう」

「フン…、ほら、さっさと行きな」

「うん!」






















お登勢さんにお礼を述べ、店の外に出る。

万事屋への階段を上って、勢いよく玄関の戸を開けた。





















「ただいまー」
































*****それより少し前…、*****





















「帰ったぞー」






















町でのの目撃情報が得られなくなった。とりあえず俺は一旦万事屋に帰ることにした。当然ババアのとこに行った、という線も考えたが、この状態で、俺ととババアが一緒にいるのは気まずいと判断したため行かなかった。





















「…誰もいねェ…、か」






















新八も神楽も…、定春もいねェ。万事屋ってこんな広かったっけか?ソファに腰を下ろしてため息を1つ。いつもだったら、『ため息なんてやめてよね』とか何とかは言う。





















「あーあ」





















が帰ってきたら何と言おうか…。

そんな時、万事屋の階段を駆け上がる、聞きなれた音が聞こえた。すぐに玄関を開ける音、そして、




















「ただいまー」





















の声が聞こえた。