銀のブーツ…、じゃあ居るんだね。
…えっと…、何を話せばいいのか分かんなくなったんだけどどうしよう!
第二十七訓 『ど忘れ!』とか言いながら最初から覚えてないだろお前
勢いよくお登勢さんの店を飛び出してそのまま万事屋に駆け上がって来たのは前回のこと。何を言うのか忘れてしまったのは今回。切実に前話に戻りたい!でも戻れないのは当たり前であって、…とにかくここまで来たらもう飛び込むしかない!
「…ただいま」
「…おー」
玄関に突っ立っていても意味がない。居間に行き、ソファに座る銀を発見。とりあえずもう一度ただいまといえば、気の抜けた返事が返ってきた。
「ねェ」「なァ」
同時にお互いに声をかける。
「何?」
私は銀の次の言葉を促した。一瞬の間が空いた後、銀が先に話始めた。
「……悪かった、とはまだ言わねェよ」
「…うん」
そう、私は何も、悪かった、とかごめんとか謝ってほしいわけじゃない。
「ただ、お前にひとつ確認したいことがあんだよ」
「…何を?」
そっぽを向いていた銀の視線が、こっちを向いたことに気づいて、私は俯いていた顔を上げて銀を見た。
「お前…」
「うん…?」
「高杉のヤツが好きなのか?」
「…は…?」
何をどうしたらこんな時に晋助が好きだのどうだの言えるんだよバカかお前!叫び倒したかったけど、とりあえずその辺にあったスリッパを銀の顔面に向かって投げつけるだけで終わった。
「ぐぺっ!って何で!?」
「何ではこっちの台詞なんだけど!どうしてそこに晋助が出てくるわけ!?」
「え、違ェの?」
「全然違うアホか!」
違ェのか…、とか言いながら銀は頭をかく。どうやら本気でそう思ってたみたいだ。
「じゃあ、お前なんで」
「それはっ!いきなりあんなことされたら怒るでしょ普通!昔みたいに銀ちゃん銀ちゃんって言って腰巾着みたいに付いて回ってた子供じゃない。もうちゃんと…、私だってもう大人なんだから!!」
そう、私だってもう一端の大人なんだから、いきなりあんなことされたら吃驚するしそれに…気にするし。そんなこと気にしてない子供だったら怒らないけどっ、私だってもう成人してる立派な大人の女性なんだから!
「おまっ…まさかオイ」
「…なによ」
「今までの全部ガキへのスキンシップだとか思ってたわけじゃねェよな?」
「…思ってるけど」
銀からの問いに思ったとおりに答えると、今までで一番盛大なため息をつかれた。
「お前なァ…、ガキにんな扱いするわけねェだろーが!」
「…?」
「『私は大人』だァ?知ってらァんなこたァ。だから必死にアプローチしてんじゃねェか」
「………え?それはつまり…」
「…ガキ扱いなんざしてるつもりはねェよ」
ああ、じゃあ…、何か色々と…勘違い!?いやいやいや怒ったのは当然であってでも子供扱いするなっていうさっきの発言は勘違いで、えっと…。もうわけわかんない!!
「まさか本気でそう考えてたとは思っても…ってオイ!?」
羞恥で赤くなった顔をこれ以上見せたくなくて、勢いでソファに寝転がった銀にダイブした。
「オイ、大人の女はんなことしねーぞ」
「いいじゃんたまには」
「ったく…。…悪かったな」
「…私も、ごめん」
なァ、と再び銀が口を開くと、突然居間に神楽と新八が現れた。
「ちょっ、何してるんスか!」
「銀ちゃんを離すアル!」
その後私は新八からお説教をされ、銀は神楽にしばかれました。2人やお登勢さんには仲直りをしたことをしっかりと伝え、長かった喧嘩騒動は幕を閉じたのでした。いやホント、ご迷惑をおかけしました。