「僕のものになってくれる?」
紡がれた言葉は突然だった。この人は一体、何を言っているのだろう。彼は上司で、私は部下。それに彼は私をはじめとする部下のトップ、ミルフィオーレファミリーのボスである。部下の命はボスに預ける。その部下である私に対し、僕のものになってくれる?、とは愚問である。
「白蘭様、何を仰っておられるのですか?私はもともと白蘭様の所有物です」
私たち部下の命はボスであるあなたのもの、私はそう思うのだ。
「そういうことじゃないんだよ」
それではどういうことなのか。
私が意味を分かっていないと白蘭様は知っているのだろう。可笑しそうにクスクスと声を漏らし、肩を震わせる。そのかすかな振動で、彼の、真っ白で美しい髪も揺れた。
「愛、だよ」
これこそ突然の言葉だ。まさか彼からそんな言葉が出ようとは夢にも思わない。私が黙っている(ただ呆気にとられているだけだったけど)と、彼は白い服に包まれた色白の腕を私に伸ばす。もともと距離はそんなに離れていなかった。当然その手は、指は、私に届く。彼の指が私の頬に触れる。彼の手は冷たい。
「ご、冗談を…」
「冗談なんかじゃないよ」
やっと出た言葉に、白蘭様の否定の言葉。
「冗談じゃない。君の命も、心も、全部欲しいんだ」
「最初に、…言いました。私はもともと、あなたのものです」
私を抱きしめる彼の体は、冷たかった。
「じゃあ、逃がさない」
紡がれた