「おはようございます」
町を歩いていた私は、前から歩いてくる3人組に声をかけた。平日のこの時間帯、私はよくこの場所を通る。このまままっすぐ進んでいけば、ちょうど、いい野菜が手に入る時間だから。どうしたことか、最近毎日のように、ここを歩くたびに彼ら3人に会う。
「お、さんじゃないですかィ」
「今日も3人仲良く市中見回りなんですね」
「オイ誰が仲良しだ?オレとこいつが仲良いわけねェだろォが!」
彼らは真選組。武装警察なんだって。世の中を騒がす攘夷志士達を追って、江戸の平和を守っている、らしい。私は本人達に会って話を聞くまで、そんな組織なんて知らなかったけど…。それを彼らにいうと、「お前の周りは平和そうだからだな」、と言われた。それは私が平和ボケしてるって言いたかったのかな…、今でも疑問。聞いたことはないけど。だって真選組の人たちはみんな命をかけて守ってくれているんだから、平和ボケしてる、って言われたっておかしくない。
「まてまてトシ、そんなに大きな声を出すんじゃない。ちゃんが怖がるだろうが」
「…チッ」
「だから土方はダメなんだ」
「なんだと総悟ォォォ!!」
鬼の副長、土方さんが一番隊隊長の沖田さんに切りかかる。それもいつも通り。私はそれを見ていつもクスクス笑うんだ。
「なんだかんだ言って仲良しなんじゃない」
「だから違ェっつってんだろォが!!」
これも毎日言ってるけれど、土方さんはいつも否定する。だって、仲良しにしか見えないんだもの。彼ら2人のじゃれあい(本人達は否定するけど)を止めるのは、いつだって局長の近藤さん。
「そろそろやめないかお前ら!すいませんねェ、いつもいつもこいつらが」
近藤さんの笑顔は優しい。彼の元にたくさんの隊士が集まって、信頼しているのもよく分かる。
「いえ、もう慣れちゃいましたから」
「アッハッハ、そりゃよかった!」
毎日毎日、こんなやり取りばかり続けている。
「いつもこの時間帯はこちらにいらっしゃいますけど、みなさんは、この辺りの担当なんですか?」
「え!?あ、いやー…」
「…?」
いつもと違うやりとりをしてみたくて、常々疑問に思っていたことを聞いてみた。ここばかり見回っても意味なんてあるんだろうか、違うところは、他の隊士さんがやってるのかな?、とか、思ってた。
「さん、」
「…何でしょう?沖田さん」
「アンタ、仕事探してるって言ってやしたよね」
「え、えぇ、そうですけど」
私の故郷は江戸から遠い田舎。田舎で働くより都会で働いたほうが給料もいいらしい、ということで、江戸に出稼ぎに来たはいいものの、なかなか仕事が見つからず…、という状況だった。
「女中を探してるんでさァ」
「はァ…、そうですか。いなくなっちゃったんですか?早く見つかるといいですね」
「そうじゃねェでさァ」
頭の上に疑問符を浮かべていると、土方さんが戸惑いながら答えてくれた。
「…まァ、要するに…なんだ、女中として、真選組で働かねェか、ってことだ」
「…わ、私がですか?」
「ああ、そうさ。ちゃんが来てくれるとやつらの士気も上がるだろうしな!」
「えっと…」
「さん、来てくれやせんか?」
「…沖田さん…」
「オイ総悟近ェぞ!」
「うるせェ土方このやろー」
確かに近い。こんなに近いと緊張しちゃう…。だけど、こわばってた体は、いつもの土方さんと沖田さんのやりとりで解れてしまった。同時に笑いもこみ上げる。
「…、さん?」
「私でよければ…、よろしくお願いします」
3人はすごく喜んでくれた。後から聞いたところ、いつもあの時間帯に3人揃ってあの場所にいたのは、私を勧誘するタイミングを計っていたらしい。なかなか言い出せなかったんだって。
私はというと、今は朝から晩まで、彼らのペースに巻き込まれて、忙しくて楽しい生活を送っている。仲良し、って言ってもいいかもしれない。…大好きな彼らのために、これからもお仕事頑張ろうと思います。
あの日、あの場所
と、いうわけで、カウントダウン初日お相手は真選組3人でしたー!
明日は誰かなー…。