はあ、と息を吐けば、自分の息は白く、そしてすぐに消えていく。小さな頃はそれが面白くなって、外に薄着で、頻繁に出ては風邪を引き、よく怒られていたものだ。今年の冬は一段と寒くて、手袋をし忘れた手は悴んで、指先は赤い。最後の授業も終わり、帰宅しようとしたところを校門で友人に捕まり、寒い中をひたすら彼氏待ちに付き合わされていた。
「!メリークリスマス!!」
「わかったからさっさと行きなよ、彼氏さん来たよ」
そう言えば、友人は照れながら彼氏の方へ走っていった。走るたびに揺れる、彼女のマフラーは、1ヶ月前に迎えた誕生日に噂の彼氏からプレゼントされたものらしい。
「何やってんだ、」
「…寒いなあ…、帰ろう」
いつの間にいたのだろう、そこには担任である銀八がいた。
「おいおい担任を無視して帰るなんて冷たい子に育てた覚えはないぞ」
「育てられた覚えはありません。教育はされてるけど」
「何か教育するって響きエロいなオイ」
「頭大丈夫ですか、寒さにやられました?あ、もとからか」
一人で騒ぎ出した先生を置いて、私は歩き出そうとする。そうすれば銀八は私の腕を掴んで引き止めた。
「…なんですか」
「お前今から帰り?」
「そうですけど、」
「デートとかしねーの?今日クリスマスだろーが」
そんなこと聞いてくる教師、初めてなんですけど!というか余計なお世話だ!と、言ってやりたいところではあるものの、言ってしまうのもなんだか負けな気がして、視線をずらすだけで終わった。
「へェ…いねーんだ」
「…余計なお世話です」
ニヤニヤしながら言ってくる銀八は、正直言ってウザイ。何だこいつ、自分だって独身どころか彼女いないくせに。
「私帰ります、寒いし」
「あ?…ああ、クリスマス楽しめよー」
「その言葉、そっくりそのままお返しします」
そう言えばいっそうニヤニヤして、手をひらひら振ってきたので、思いっきり顔を背けて歩き出した。
「あ、」
雪だ。真っ白な雪。
「ー」
「う、わっ」
早く帰ろう、そう思ったとき、すぐ後ろから先生の声がしたかと思えば、首元にマフラーが巻かれる。
「マフラー…?」
「お前一応女なんだから、少しぐらい暖かくしとけよ」
じゃあな、とすぐに背を向けて学校に戻る先生を、ほんとうに少しだけだけど、格好良い、と思った。
White X`mas