数日前に先輩から「お前は一生俺のモノ」宣言を受けたわけだが(一部脚色があるのは許してほしい)(恋する乙女はいつでも都合よくとらえたくなるものなのだ)、自体は非常に深刻です、どーぞ。進展がないどころか先輩に限ってありえないだろうと思っていた恋敵(と私が勝手に思っている)が現れてしまった。要するに私は先輩にとって唯のおもしろい後輩の1人で、先輩がちょっとかなりの変人が故に他の後輩がいなかっただけ、私が特別だったわけではなかったのだ(ポジティブがネガティブに変わるのもそれはそれで恋する乙女の仕事の内である)。
「あー、ばからし」
ため息をひとつこぼせば、下から「アア?」という飾り気も何もない声と、「どうしたの?」と無邪気に笑うショートカットの似合う女の子の声が返ってきた。先輩、ショートカット、好きなんだろうか。私も切ってみようか。
「、だいたいお前はさっきから話聞いてんのか」
「あ、全く」
悪びれもせずに返事をすれば、やはりお気に召さなかったようで、暴れる音が下から届いた。
「、今回だけだからさー、協力してくれないかなあ?」
屋上給水棟の上、お気に入りの場所に転がっている私へ、彼女はひょっこり頭を覗かせて言う。四ツ谷先輩へのキックの威力は凄まじかったのだろう、先輩は痛みに悶え屋上を転がっていた。
「黒髪の綺麗なロングなら、適任がいるじゃない。あー、えっと、真の友達」
「ヒナノ?」
「そう、その子」
中学2年に進級して少し経った頃、中島真とその親友ヒナノはとある事件で知り合った。
「え、今回みたいな件にはがぴったりだよ!何があっても怖がらない神経しているし!」
「真それどういう意味」
綺麗な髪を狙うらしい犯人を捕まえるための作戦会議、それが今日の集まりの目的だったはず。怖がる怖がらないを条件に入れる辺りがさすが先輩の作戦。体を起こして上から先輩を見下ろすと、まるで悪戯を想いついた無邪気な子供のように笑っていた。無邪気な子供の笑みはそんなにあくどいものじゃないけど。
「中島もっとちゃんと動け!よし!そうだ!」
「えっやだ真それ気持ち悪いやめて」
「ばかやめんなそれでイイんだよそれで!」
「真面目にやってるのに気持ち悪いなんてヒドイよーー!」
「その動きで近寄らないで!」
恋敵だなんだと騒いでみても、結局は私だって真のことは好きなのだ。
こんな日も悪くないかも。
そう思って笑えば、こっちを見た四ツ谷先輩も満足げに笑った。
スカイブルーの憂鬱
「せっかくの綺麗な髪囮にしてやるんだ、思いっきりやれよ中島ァ!」
作戦実行前の先輩の言葉に撃沈されかけたのは、ここだけの話だ。
2014.06.10
四ツ谷先輩好きです。
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